以下は妄想の産物です。実際にやるとかどうかは全く判りません。
 まあ、流して頂くのが吉かと。
 
 
 
 
 
マリア様「も」みてる
 
 
予告編
 
「へえ」
 教師は面白そうに言うと、書類をシスターへと回す。
 シスターも書類に目を通すと、「あら」と言って微笑む。
「いよいよ来るんだ…」
「そうね。でもまさか、こんな時期に来るなんて」
「偶然って怖いね」
「江利子さまの娘さんが、新任で来るのも今年でしょう?」
「ええ」
「乃梨子は、江利子さまのことを直接知らないのよね」
 私立リリアン女学園のシスター、藤堂志摩子は微笑んだ。
「噂はたくさん聞いたけれどね」
 同学園高等部の数学教師、二条乃梨子は肩をすくめるとそう言った。
 
 
「はぁ?」
 私は思いっきりの否定を込めてそう言った。
「私は東京に出たいの。お姉ちゃんがいるんだから、なんの心配もないでしょう? お姉ちゃんだって、私一人くらい転がり込むのは構わないって言ってるよ?」
「あのね…、貴方、まだ中学生なのよ? 親元離れてどうするのよ」
「だから、高校は東京に行きたいって言ってるの!」
「駄目」
「わからずや! いいよ、お父さんに言うから!」
「お父さんがいいって言っても許さないからね」
「どうしてよ」
「お父さんは貴方にものすごく甘いから、反対するわけないもの」
 最終的には、記念受験くらいさせて欲しいと言うことで決着がついた。
 私の成績で地元の公立に落ちるわけがないと母は思ったのだろう。
 大正解。
 しかし、それは真面目に受けていればの話。
 さっさと眠りに入った私の白紙答案では、どれほど内申書が良くても入学は無理だろう。
 驚く母を尻目に、私は晴れて唯一合格した高校に入学することになった。
 私立リリアン女学園。
 私が住むことになる家の家主…異母姉が、同居の条件として持ち出したのだ。
「リリアンに通うのなら、住まわせてあげてもいいよ」
 私はその条件を呑んだ。
 首都圏に住めるなら、学校はどうでもいい。
 勉強は自力でやるもの。学校は頑張って暇を潰す所。
 私にとって、学校環境は割とどうでもいいことの一つだから。
 
 
 リリアン初等部の前に止まる黒塗りの車。
 車から降りるのは二人の女の子。
 いかにも元気いっぱいと言った風の、どことなく子ダヌキを思わせる愛嬌の少女。
 もう一人、生まれたときからエリートです、と言った風を漂わせている美少女。
 美少女が言った。
「それでは、お父様、行ってまいります」
「ああ、裕美。いっておいで」
「いつもすいません」
 元気少女が頭を下げる。
「いいよ。祐子ちゃん、気にしないで。それより、ユキチによろしくね」
「ユキチって…お父さんのことですよね」
「そう」
 柏木は微笑むと、運転手に車を出すように命じる。
 それを見送る二人。
「さあ、行きましょう、祐子さん」
「うん。裕美さん」
「ごきげんよう」
 二人の前に立つ女性。
「理事先生、ごきげんよう」
「祐子さん、違うわ。先生じゃないわよ。理事でいいの。小笠原理事、ごきげんよう」
「ごきげんよう」
 祥子は二人の小学生に挨拶を済ませると、祐子の頬に触る。
「うふふ。どんどん似てくるのね、昔の祐巳に」
「祐巳おばちゃんのこと?」
「そう。祐巳は貴方みたいにとっても可愛かったの、今でも充分可愛いけれど…」
「小笠原理事、話が長引くと私たち遅刻してしまうので、失礼します」
 祐子の手を引っ張って進んでいく裕美。
 残された祥子は、なにやら複雑に笑うと、理事室へ向かって歩き始めた。
 ちなみに十数分後、初等部教師からの連絡で駆けつけた乃梨子と志摩子(鬼理事と影で呼ばれる祥子に正面切って文句が言えるのは、この二人と時々出入りする法律顧問の水野蓉子しかいない)に「いい加減にしてください」と怒られることになる。
 
 
 姉はお酒をよく飲む。
 あれは飲み過ぎの部類にはいると思う。
 本人に言わせると、「お酒の飲み方は母親譲り。あ、あんたの母親じゃなくて私のほうね」らしい。
 元モデル、現エッセイストで人気評論家というよく判らない経歴の持ち主。それが私の姉、細川可南子だ。
 ちなみに、姉は私より母のほうに年齢が近い。
 父は、姉を産んだ人と離婚して私の母と再婚したのだ。
 しかも、できちゃった結婚。さらに、母と姉はわずか二歳差。
 父は、自分の娘とさほど変わらない相手を妊娠させたことになる。
 良いか悪いかよりも、凄いと思った。だって、ここで悪いなんて思ったら私は存在を否定されてしまうのだ。そんな怖いことはできない。
「ちょっと!!」
 私が荷物を整理していると、なんだか凄い人が来た。
 綺麗な人だ。女優のように見える…じゃなくて、女優だよ。
 お姉ちゃん、いつの間に女優とお友達?
 この人って、あの松平瞳子さんじゃないの!
「あら、大女優さん、どうしたの?」
「嫌味な言い方しないで下さる? 可南子さん」
「女優は女優じゃない」
「…あっそう。判ったわよ。細川さん」
「…何よ、瞳子さん」
「リリアンに次子ちゃんを入れたって本当ですの?」
「そんなことで嘘つかないって」
「なんでそんなこと」
「なんでって言われても本人に聞いてよ。この子、乃梨子と同じ事やってのけたんだから」
「仏像マニアですの?」
「そっちじゃなくて」
「まさか、リリアン以外受けなかった?」
「しかも乃梨子と違ってこちらは自由意志で」
「…そんなにリリアンに来たかったんですの?」
「いいえ。この子は関東圏ならどこでも良かったみたい。たまたま私がここに住んでいるから、一番近いのがリリアンだっただけ」
「同居するの?」
「そう」
「ますます乃梨子さんみたいじゃありませんか」
「次子にも乃梨子みたいにいいお姉さまが見つかると良いけどね」
「そうそう、いい人と言えば」
「お断り」
「まだ何も言ってませんわ」
「判るから。瞳子さん、貴方なんでそうやって私や乃梨子を結婚させようとするの? あまつさえ、由乃さまや令さま、蓉子さまに志摩子さままで」
「山百合会OBの既婚率は笑ってしまうくらい低いんですのよ」
「私に言われても知らない」
 
 
 次子は気配に振り向いた。
「…もしかして、私に何か用ですか?」
「あら、気付いたの?」
「…ストーカーみたいな真似、しないで下さい」
「知らないの? 歴代最高の三世代伝説」
「なんですかそれ?」
「小笠原祥子さまから二条乃梨子さままで、計8人の三世代が、今では伝説と呼ばれる山百合会最強の布陣」
「それと私をつけ回すのとなんの関係が?」
「三世代目の細川可南子さまの伝説にあやかったつもりだけど? 偶然だけど、貴方の名字も細川だし」
「なんですか、それ」
「ストーカーが縁で結ばれた姉妹のお話」
「…なんだか、気に入らない話のようですから、私は失礼します」
「まだ用事は終わってないのよ」
「急いでますから早く言って下さい」
「じゃ単刀直入に。貴方、黄薔薇のつぼみの妹にならない?」
 
 
「…次子さん、お願いだから、シスター志摩子と乃梨子先生の所に行って欲しいの。貴方、可南子様の実の妹なんでしょう?」
 
 
「私は、可南姉じゃないの!」
「当たり前でしょ。誰も貴方が可南子だなんて言ってない。だって貴方、可南子の足元にも及ばないもの」
 乃梨子がクールに笑った。
「貴方が薔薇さまになったとしても、祥子さまや志摩子さんはおろか、私や瞳子の足元にも及ばないわよ」
「私は先生なんて嫌いです…」
「いいじゃない。数学教師なんてそんなものよ」
 憤然として去っていくの後ろ姿を見ながら、志摩子は咎めるように言う。
「…乃梨子、次子ちゃんのこと気に入ったみたいね?」
「クスクス…だって、可南子そっくりなんだもの…」
 
 
 可南子はグラスを傾けた。
 次子はもう寝息を立てている。
「…次子、私はリリアンに救われて、リリアンで生まれ変わることができたんだからね。貴方もきっと、同じよ…」
 
 
 
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