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それは、長く始まる物語の第一歩。
語り継がれる「伝説」となる鮮やかな薔薇達の物語の第一歩。
 
 
FIRST Contact
ver.RED&RED
〜DREAM・ROSE・GARDEN Ep.0−X1〜
 
 
 
(久しぶりに見るマリア像はやっぱり美しいのね…)
 東京都下、武蔵野の一角にある幼〜大の一貫教育をモットーしたミッション系女子学園「リリアン学園」。
 その幼稚舎の入り口付近のマリア像の前でとある親子が立っていた。
「…そうよ、マリア様にこうやってお祈りを捧げるの。すると良いことがあるのよ?」
 今日から幼稚舎へ入所する愛娘にリリアンでの不文律の一つを教える妙齢の女性―どうやら少女の母親のようだ。
「でも、懐かしいわね本当に…」
 かつて自分が通った学舎はここよりやや奥まった場所にあるが、学園内のあちこちに立つ白磁のマリア像はその思い出にある物と変わりはなかった。
 
 そして娘と一緒にお祈りを済ませ、いざ受付に行こうか―とした時、ふと後ろから声をかけられた。
「みきさん?みきさんよね?」
「はい?」
 聞き覚えのある―いや忘れられるはずのないその優しげな声、振り向いた先にいたのは間違いない人。
 彼女―福沢みきにとって最愛の「姉(グラン・スール)」である、小笠原清子であった。
「あ!ご、御無沙汰しております!さーこお姉さま!」
 幼稚舎PTA会の都合で娘と一緒に来たらしいその人に懐かしい呼び名で答えるみき。僅か1年弱と言う間ではあったが、しっかりとロザリオを授受し合った間柄であった二人は、一瞬の内に過去へ戻っていた。
 
 母親同士が昔話に花を咲かせる中、清子の後ろでマリア像に挨拶の手合わせをした黒髪の少女が母の「妹」の後ろに隠れて顔を真っ赤にして恥ずかしげに照れているようにしているおさげの少女に気付いた。
 やや感情が乏しいような感じでじぃっと見つめているその視線の先に気付いた清子は紹介を求めた。
「あら?みきさん?そちらのお嬢さんはどなた?」
 ここへ来て自分の娘を紹介していないことに気付いたみきは慌てて娘を前に出した。
「あ、す、済みません、さーこお姉さま。私の娘、福沢祐巳です。今度からリリアンへ通わせることになりました。ほら祐巳ちゃん挨拶して? この方がお母さんの大好きな『お姉さま』なのよ?」
「ご、ごきげんよう…ふ、ふくざわゆみです…」
 緊張のあまりついどもってしまいがちだったがそれではっきりと挨拶を返し、祐巳は精一杯の笑顔でそう返した。
「ごきげんよう、ゆみちゃん。ふふっ、みきさんによく似て可愛いお嬢さんね」
 再び他愛のない話に戻った母親の方には全く意識を向けていなかったその少女はまじまじと祐巳を見続けていた。そしてその緊張に慌てながらも溢れんばかりに笑顔を目の当たりにした瞬間、清子の後ろにいた少女は目を見開いた。
 そして、まるでその笑顔が何かのスイッチだったかの様に表情を緩ませた少女は、母親でもそう記憶が無い程に可愛らしい笑顔を浮かべつつ、とんでもない爆弾発言をしたのだった。
「わたし、おがさわらさちこ。ゆみ、あなたわたしのいもうとになりなさい」
 ひゅぅぅぅっぅ〜〜
 乾いた風がその場を支配した。
「「へ?」」
「あらあら、祥子さんたら…」
 同じ様な声を出して間の抜けた顔のままフリーズする福沢親娘に、ビックリしてはいるようだがあまり表情の変わらない清子。
 しかしながら祥子は聞こえなかったのだろうか?と思ったのかもう一度その爆弾発言を繰り返した。
「わたし、おがさわらさちこ。ゆみ、あなたわたしのいもうとになりなさい」
 
「あ、え、そ、そのぉ」
 未だに完全フリーズをしている母親達と同様に祐巳の思考回路は呆けていた。
 しかしながらその思考回路が呆けたおかげなのか、祐巳の血筋から受け継ぎそして未だ奥底で眠っているはずだった彼女の特殊な潜在能力が―一時的ではあったが―目覚めてしまったのだった。
 彼女の潜在能力とは『他人の内心や心情変化をある程度は簡単に読めてしまう』と言う物だった。
 その能力は祐巳、祥子の内心変化―ある種の怯えと取れる感情を鋭く読みとった。
 そして、初対面(のはず)の祥子に何故か妙なくらいの懐かしさと、表現できない感情をを感じた祐巳は自分自身がビックリするくらいに自然とその言葉を口にしたのだった。
「は、はい、さちこ…おねえさま…」
 確かに物心付いた時から散々「姉妹関係」の事を教え込まれて来たとは言え、その様な言葉がこうも簡単に、そして自然に出るとは思えなかった。
 が、祐巳はその言葉に反応してしまった。そして、いざ口にした後はそう反応した事に何の疑問も持たなくなっていた。そう、まるでそうする事が当たり前であったかの様に。
 
 するとさっきまでの機嫌の悪そうな表情は何処へやら。祥子は途端に零れるような笑顔になった。
 そして、その「天使の微笑み」に今度は祐巳が落ちた。
「ではいくわよ、ゆみ。わたくしがあんないしてあげるわ」
 そう言って祥子は凛とした表情で、ゆっくりと祐巳に向かって手を差し伸べた。
「あ、ありがとうございます、おねえさま…」
 やや頬を紅く染めながら「恥ずかしさ」と「嬉しさ」が綯い交ぜになった様な表情でその手を取った祐巳は、ゆっくりと祥子の後を付いて行った。
 その後ろ姿は立派に姉妹(スール)の姿だった。
 
「えーと、さーこお姉さま?私達どうしましょう?」
「そうねぇ…取り敢えずお祝いの準備でしましょうか?」
 何かまだショック状態から抜けきれない母親達を置いたまま。
 
 
to be countinue?
 
あとがき
 
 
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