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リリアンの怪談
 
 
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「怪奇・薔薇の館に潜む妖怪変化!」
薔薇の館には七匹の妖怪がいると言われている。
これは、その妖怪たちに関するデータである。
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 そこまで読んで、祥子さまはこめかみに手をやった。
「なんなの、これは」
「リリアンかわら版…ですよね?」
 自信なさげに答える乃梨子ちゃん。
「七匹の妖怪って…」数え始める瞳子ちゃん。
「まずは可南子さん。それから…乃梨子さん、由乃さま、祐巳さま、白薔薇さま、黄薔薇さま、紅薔薇さま…確かに人数は七人いますわね」
「瞳子さん、『まずは』ってどういう意味かしら?」
「この中で一番妖怪に近いと思いまして…」
「頭からドリルぶら下げてる人に言われたくありません。第一、今、あなた自分をちゃっかり数えずに七人って言いませんでした?」
「これはドリルじゃないですわ、大入道」
「二人とも当たり」
 冷静にかわら版を読んでいた由乃さんが顔を上げた。
「ほら、ここ」
 
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妖怪その一
「ドリル頭」
頭からドリルをぶら下げている。
虫歯の子を見つけるとドリルで削ってしまう。
 
妖怪その二
「大入道」
とても背が高くて、いつも上から見下ろしてくる。
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「…」
「…」
 無言で手を取り合う二人。
「可南子さん、新聞部の部室はご存じかしら? ゆっくり話し合う必要があると思うのだけれども」
「ええ。知っていますわ。ところで瞳子さん、新聞部室には可燃物がたくさんあると思いません?」
 意気投合しているのはいいことだけど、これはちょっと困る。
「二人とも落ち着いて。過激な行動に走っちゃ駄目だよ」
 慌てて止める祐巳。
「でも、瞳子はプンプンですわ」
「祐巳さまがそうおっしゃるなら…、ここは抑えますが」
「これ、私のことかな」
 由乃さんがそう言って指を置く。
 
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妖怪その三
「霊使い少女」
その少女は霊を好きなときに呼び出しては使役するという。
 
妖怪その四
「霊」
上記の少女に好き勝手にこき使われている情けない霊。
これはあまり怖くない。
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「字だけ替えたら、事実以外の何ものでもないわね」
 祥子さまの冷静な指摘に渋い顔の令さま。
「祥子、それはちょっと…」
 由乃さんは目を輝かして記事を読んでいる。
「なんか格好いいわね。私」
「由乃?」
「怨魔調伏! とかね」
 あの、由乃さん、それじゃあ令さまが祓われてしまうんじゃないでしょうか?
「うわ、ひどいっ」
 乃梨子ちゃんが志摩子さんに該当する部分を見つけたらしい。
 
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妖怪その五
「銀杏の化身」
見目麗しい少女だが、その正体は銀杏の化身。
銀杏の匂いを辺りになすりつけて回るはた迷惑な妖怪。
「薔薇の館」の異臭の原因。
 
妖怪その六
「生きている人形」
生きている市松人形。
「銀杏の化身」の忠実な下僕。
普段は仏像に擬態している。
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「そんなに匂います?」
 あくまでにっこり尋ねる志摩子さんに、乃梨子ちゃんが慌てて言う。
「全然、匂いません。それどころか志摩子さんはいい匂いです」
 相変わらず、志摩子さんのこととなるとギリギリの発言をかます乃梨子ちゃん。
「そして私は……志摩子さんの下僕の人形で仏像に擬態…」
 何か顔が喜んでるよ、乃梨子ちゃん。もしかして満更でもないとか?
 
 ギリギリギリ…
 場違いな音に、全員の視線が向く。
 祐巳はギョッとなった。
 …お姉さまがハンカチを握りしめている。
 ああ、これは…
 
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妖怪その七
「ヒステリー女」
気に入らないことがあるとすぐにハンカチを引きちぎる。
怒らせると大変なことになる。
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「なんなのよ、これは!」
 爆発した。
「令、これは私のこと!?」
「え、なに、祥子、なんのことかわからないよ?」
 とぼける令さま。
「志摩子、あなたはどう思って?」
 乃梨子ちゃんが震えながら志摩子さんの前に立ちはだかっていた。
 目が語っている。
「お姉さまを倒すなら私の屍を越えて行きなさいっ!」
 乃梨子ちゃんの迫力に、さすがの祥子さまも目をそらす。
「それでは…」
 テーブルの下に隠れる瞳子ちゃんと可南子ちゃん。
 …私のお姉さまは地震か?
 と祐巳が思った瞬間、それが来た。
「祐巳、私はここに書かれているようなことをしているの?」
「はい」
 全員が目を剥いた。
「な…、祐巳」
 聞いた祥子さま自身も予想外の答だったらしい。
「あなた、今…」
「でも、私はそんなお姉さまも大好きです」
 うわ、そう来たか、祐巳ちゃん。これは令さまの呟き。
「え…」
「ヒステリーとか怒りっぽいとかって、裏を返せば情熱的って意味じゃないですか。私はそういうお姉さまが大好きなんです」
「まあ、祐巳ったら」
 ハンカチを戻す祥子さま。
 
 
 …ふう。良かった。他の人はいいとして、お姉さまが怒ったら大変だもの…それにしても、真美さんに頼んでほんの冗談で作ったものを、薔薇の館に置き忘れたのはマズったなぁ…まあいいや、よく見ると「リリアンかわら版」じゃなくて「リリアソかねら版」って書いてあるんだから、新聞部も知らないって言い張れるよね…
 
 
 
 
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最強の妖怪
「化け狸」
とにかくタヌキ。
人を化かすのがうまい。
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あとがき
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