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箱入り妹
 
 
 
「輝け! 第三回、箱の中身はなんじゃいな杯、箱入り妹ゲーム!」
 ドンドンパフパフ〜〜〜〜
 楽しそうに擬音を鳴らしていらっしゃいますけど、自棄ですね、令さま。自棄になってますよね、ええ、目が笑っていません、というより生ける屍の目ですよ、それは。
 反面、どうしてそんなに心から嬉しそうなんですか、江利子さま。
「このゲームは、薔薇の館に代々伝わる神聖なゲームよ。内容は、妹を選ぶことのできないヘタレどもにとっとと妹を選ばせる、ただそれだけのコンセプト。わかりやすいと言えばこれほどわかりやすいこともないわよね」
 本当に嬉しそうですね、江利子さま。って、その横で拍手している蓉子さまと志摩子さんとお姉さまは一体…。
「司会は私、栄えある『第二回箱の中身はなんじゃいな杯、箱入り妹ゲーム』で当時の黄薔薇のつぼみに選ばれた私、鳥居江利子がお送りします」
 はあ? って、江利子さま何やってたんですか。…蓉子さま、「懐かしいわね」なんて微笑みながら言わないでください。マジですか? 
「ルールの説明です」
 要は、並べられた箱の中から、これだと思う箱を選び、中に隠れている子を妹にしろというゲーム。
 そんなので妹を決めてしまっていいんですか?
 由乃さん、鼻息荒く準備運動しないで。やる気満々ですか?
「カーテンで仕切られた部屋の向こうに箱は全部で四つ! 中には外れの箱もあるからね」
 外れ作ってどうするんですかっ!
「これだと思った箱を開けて、中の子を連れ出すのよ」
「あれ、江利子。用意した箱って三つじゃなかった?」
「いいえ。私が来たときは四つだったわよ? てっきり蓉子が増やしたんだと思ってたけど…」
「…まあいいわ。当たりの数が変わっていないのなら」
「続けるわよ」
「ええ」 
「それでは、まず、祐巳ちゃんからどうぞ!」
 しょうがない…。
 私は一番端のカーテンを開けて中に入った。
 
 一つ目の箱…
 ……えーと。
 なんか、箱から突き出て回っているんですけど…。
 ちょうど頭の位置ですよね。
 ドリドリと音を立てながら回っているんですけど…。
 誰が入っているかとってもよくわかりますよね…。
 近づくだけで回転に巻き込まれそうな気がして怖いです。
 …先に他の箱を確認しますね。
 
 二つ目は…
 でかっ! 箱でかっ!
 いや、箱大きすぎっ! 天井まで届いてるしっ!
 明らかに人の大きさじゃないし!
 いくらなんでもこんなに背高くないし。
 中はまさか…ねえ。いくら何でもこの大きさは…。
 …私の知らない一年生にこの大きさの子が!?
 まさか…いや、江利子さまならやりかねない…。
 うん、取りあえずこれもパスして他の箱を確認しよう。
 
 三つ目…
「しくしくしくしくしくしくしくしく」
 …あの、泣いてるんですけど。
 ああ、そう言えば今日は朝から乃梨子ちゃんの姿見てないな…。
 大変だね、山百合会の正式メンバーの中で一人だけ一年っていうのも…。
 ていうか、この箱選んだら一体どうするつもりなんだろう…。
 乃梨子ちゃん、ゴメンね。もう少し我慢してね。
 
 四つ目…
 あれ? 瞳子ちゃん、可南子ちゃん、乃梨子ちゃんと来たら次は誰なんだろう?
 …なんか妙にピンクなオーラを感じるんですが…。
 あ、箱に穴が空いてて、その下に何か書いてある。
 なになに…
【福沢祐巳ちゃんはここに手を入れないでください。島津由乃は好きにしろ】
 ………
 ……
 これは入れてみろって言うことですよね。
 ………
 ぎゃうっ!
 今、ペロッて、ペロッて舐められた!
 中の人にペロッて舐められたッ!
 え? 手が離れない。誰か中で掴んでる。誰、誰なの。
 あ、そう言えば江利子さまと蓉子さまがいたのに聖さまだけいなかったんですよね。
 ちょっ、ちょっと、離して下さい。何するんですか。
 あ、箱にもう一つ何か書いてある。
【注意・人食い箱】
 私、食べられちゃうんですかっ!?
 嫌、ちょっと、止めて下さい、聖さま! 聖さまってば!!!
 ああああああああああーーーーー
 
 
あとがき
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