どんぐり
後書き
後日談――
久し振りに小寓寺を訪れた乃梨子。
志摩子と乃梨子の関係は、ようやく双方の親が認めるモノとなった。
これまでには、菫子さんや賢文の助力もあったのだけれど、やはり一番大きいのは二人の互いを想う心だった。
そして、今日は二人の新居生活の始まりを報告に来たのだ。メールや電話で済ませることも可能なのだが、やはり二人はきちんと口頭で済ませておきたかったのだ。
勿論、今日訪問することは事前に伝えてある。
「二条乃梨子さん? 藤堂志摩子さん?」
小寓寺の山門を潜ろうとした二人を呼び止める者がいた。
振り向いて、怪訝そうな顔の二人。
見覚えのない青年がそこにいる。
「お久しぶりです。今日戻ってくると、住職に聞きました」
青年はそう言うと、駅前スーパーの買い物袋を差し出した。
「あ…」
どんぐりがはち切れんばかりに詰められた袋。
「お姉ちゃん」
ニッコリと笑う青年は確かに――
という話を書く気は全くない。