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バナナ
 
 
 
 飯・即・食
 それがスバルとギンガ、二人がただ一つ共有した真の正義だったはず――
 などという話は一切ない。
 いくらスバルといえども、テーブルの上に置いてあるおやつを見つけ次第食べるなどと言う恥知らずな真似は週に一度くらいしかしない。機嫌の悪いときは週に二度。
 しかし、置いてあるおやつを見て期待に胸を膨らますのは、スバル的には正義である。ジャスティスである。ウィナーでありビクトリーである。
 
 そして今日も、スバルのテンションは上がる。
「バナナ、バナーナ」
 それも無理はない。とたまたま台所に入ろうとして奇行を目撃したウェンディは思う。
 今日のおやつはバナナなのだから。
 バナナ、である。
 なのはが聞いたなら、「は?」と言うだろう。
 はやてが聞いたなら、「うううう、ゲンヤさん、そないに貧乏やったんやぁ……みんなエンゲル係数が悪いんやぁ」と泣き出すだろう。
 フェイトが聞いたなら、「やっぱりバナナはおやつに入るんだ」と聖祥小学校時代からの十年以上の疑問にピリオドを打つだろう。
 バナナなど、地球日本ではぶっちゃけありふれたものである。好き嫌いや嗜好は置いて、少なくとも贅沢品ではない。
そしてそれは、ミッドチルダでも同じである。
 が、しかし。
 このバナナはバナナが違うのである。
 スバルの前にあるのは、正確には「スプールスバナナ」である。これは、ミッドチルダでも普通に見られるバナナとはバナナが違うのだ。
 まさに、バナナ・オブ・バナナズ、管理局の白いバナナ、雷刃のバナナ、イノーメスバナナなのである。
 一言で言って、美味い。
 二言だと、超美味い。
「♪バナナバナーナ♪」
 歌になった。
 テンションはひたすら上がっている。絶好調である。
 頭に横から指をぐりぐり突っ込んで「最高にハイッてやつだぁあああっ」と叫びたいくらいである。
 今なら一人でマリアージュ2000体と戦える。2001体いると負ける。2001年は宇宙の旅。
 そんなスバルはなんだか楽しそうだな、とウェンディは思う。
 しかし、実のところウェンディはそれほどバナナが好きではない。
 純粋に、ウェンディはバナナの味が好きではないのだ。もにょもにょした食感がダメらしい。
 というわけで、ウェンディにとってバナナはかなりどうでもいい。それでも知識としては、スプールスバナナが凄いということは知っている。
「♪バナナバナーナ♪」
 ♪ズンチャッ♪ズンチャッ♪
 ワルツの伴奏がついたような気がするくらいにスバルはノリノリだった。
 そんなにあのバナナは美味しいのか。
 ウェンディは、テーブルの上に置かれたバナナを凝視する。凝視したところで、どうにもならないのだが。
「あれ、そんなに美味しいんスか?」
 疑問は膨らむ。
「♪バナナバナーナ♪」
 ♪デケデケデケデケッ♪
 どうやら、エレキのリズムになったらしい。
 古き良き日のグループサウンズ。最近で言うならゴーオンジャー。
「スバルが壊れていくッス」
 ウェンディは素直だった。
 というか、いくら美味しくてもバナナ一つで壊れる戦闘機人って。
 いやそれよりも、つまり、このスバルに壊されたチンク姉はバナナ以下なのか。ドクター涙目である。
 スプールスバナナ恐るべし。
 
「♪バナナバナーナ♪」
 ♪チャッチャッチャラーラ♪
 そうこうしているうちにスバルのノリノリカウンターが限界突破してマンボになったので、思わず、
「♪うっ♪」
 ノってしまったウェンディ。
 スバルの動きが止まる。
 ギギキっと音がしたような錯覚を覚えて、ウェンディは凍り付く。
 スバルが自分を見ている!
「……見た?」
「い、いや、何も見てないッス」
「……振動破砕って、痛いらしいよ」
「すいません。見てました。勘弁してください」
「見たんだね」
「はい。不本意ながら」
「……振動破砕って、痛いらしいよ」
「どっちにしても!?」
 どうやら、見たら死ぬ系の悪魔だったらしい。
 ウェンディピンチ。ぶっちゃけ、ティアナに相対したときよりピンチ。というか、あれはピンチではなかった。
未だにどうして負けたのかよくわからない。なんか謎の力が働いたのだろう、というのがノーヴェ、ディードと話し合った結論だ。
 許してもらう方法を必死で考えるウェンディ。
 ――考えろ、考えるッスよ! ウェンディ! ここを華麗に突破して、アホの子呼ばわりを返上するッス!
 とっくにアホの子の座は某雷刃たんに奪われているような気もするが、ウェンディは必死だった。
 これほど必死になったのは、クアットロにシュールストレミングの缶を開けろと言われたとき以来である。
 その後、全ナンバーズによってクアットロが袋叩きにされそうになったのは記憶に新しい。恐るべき匂いによりガジェットは破壊され、ナンバーズは全員引きこもりになり、後始末は泣きながらドクターがやった。
 ――そうッス!!
 その時、ウェンディに天啓閃く!
 
「ただいま」
 チンクとディエチが連れ立って帰ってくる。
 ノーヴェはまだ道場にいるらしい。
「誰もいないのかな?」
「さあ。まあいい、ディエチ、荷物を先に台所に頼む」
「うん」
 ディエチは、チンクから買い物袋を預かると台所へ向かう。
 そこでは……
「♪バナナバナーナ♪」
「♪バナナバナーナ♪」
 ♪ドンドコドコドコッドンドコドコドコッ♪
「……ウェンディ? スバル?」
「……見た?」
「……見たっスね?」
「な、何も見てない。見てないから」
「……振動破砕とディバインバスター、どっちが痛いかなぁ?」
「……それは楽しみっスねぇ」
「ごめん、見てた。許して」
「ディエチ、見てたッスか?」
「うん。ごめん」
「……振動破砕とディバインバスター、どっちが痛いかなぁ?」
「問答無用!?」
 
 そしてチンクは、いつまでも戻ってこないディエチに……
「ディエチ? いつまで台所に……」
「♪バナナバナーナ♪」
「♪バナナバナーナ♪」
「♪バナナバナーナ♪」
「ひっ!?」
 
 
「ただいまぁ。あれ? みんな何処行った? チンク姉?」
「♪バナナバナーナ♪」
「♪バナナバナーナ♪」
「♪バナナバナーナ♪」
「♪バナナバナーナ♪」
「ち、チンク姉?」
 
 
「♪バナナバナーナ♪」
「♪バナナバナーナ♪」
「♪バナナバナーナ♪」
「♪バナナバナーナ♪」
「♪バナナバナーナ♪」
 
 
「ただいま。あれ、みんな何をやっているの? あ、バナナ。いただきます」
「あ」
「あ」
「あ」
「あ」
「あ」
「あ。おいしい。なにこれ。あー、スプールスバナナか。なるほど」
「あれ」
「あの」
「ギンガ姉さん?」
「ギンガ?」
「ギン姉?」
「……あ、ごめん。全部食べちゃった」
 
 その夜、高級バナナを探して深夜スーパーをハシゴするギンガの姿があったとか……
 
 
 
 
あとがき
 
 
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