フェイトちゃんは意地悪
フェイトちゃんは意地悪だ。
「いいよ。ヴィヴィオと遊びに行く約束でしょ? なのはママの代わりにフェイトママが行くよ。でも……実はその日、エリオとキャロと先約があるんだ。あ、別にいいんだよ。二人なら、ヴィヴィオが一緒でも嫌がらないどころか大歓迎だよ。だから、四人で一緒に遊びに行くよ」
う。それは悪いことをしたような気がするけれど…
本当にいいのかな。フェイトちゃんだって、エリオやキャロと三人水入らずで過ごしたいんじゃないのかな。
「いいよ、気にしなくても。ユーノがお休みをとるなんて滅多にないことだもの。キャロとエリオなら、ユーノに比べればお休みが多いから、大丈夫だよ」
ゴメンね。ユーノ君の休みが急に決まっちゃって。
たまたま、私のオフの日にユーノ君もオフになると思わなかったから、ヴィヴィオと遊びに行く約束してたの。
「だから、いいんだよ、なのは。そんなに気にしなくても。私だってヴィヴィオのママなんだし、エリオとキャロだってわかってくれるよ、多分」
今フェイトちゃん、多分って言ったぁ。
やっぱり、エリオとキャロは嫌がるのかなぁ。
「うーん。まあ、二人だって楽しみにはしていたみたいだけど……」
ううう、ごめんなさい。
「だから、気にしすぎだって、なのは。あ、だったらこうしよう。お詫びに翠屋のケーキを差し入れる」
エリオとキャロに?
「私も食べたいよ? もちろん、ヴィヴィオの分もね」
………うん。用意する。何がいいのかな。
「イチゴのショートケーキ」
そっか。大人気だもんね。当然四人分だよね。うん、わかった。
「…と、モンブラン」
二つなの?
「ショコラプティングも捨てがたいし」
三つ!?
「エリオはたくさん食べるし、キャロだってケーキなら」
仕方ないか……。私の我が侭だもんね。
「そうだね、なのはの我が侭だよ」
う……フェイトちゃんの意地悪。
「ふふふっ」
なのはの意地悪。
どうして、ユーノとデートなんて、私の前で嬉しそうに言うのかな。
せめて、大事なお友達にお仕事ご苦労様のご褒美だよ、とか、そういう風に言ってくれればいいのに。
なのは、とっても嬉しそうだし。
いいよ、いいよ。エリオとキャロとヴィヴィオと四人で、美味しいケーキ食べて、うんと遊んでやるんだから。
だからなのはは、ユーノをとっても大切にしなきゃいけないんだよ。
私が、ユーノだったら仕方ないな、と思えるくらい。
だから、なのははユーノにたくさん愛されなきゃいけないんだよ。
私が、ユーノに負けちゃったな、と思えるくらい。
私が敵わないくらい、いっぱい、いっぱい。
なのはもユーノも、本当に意地悪なんだから。
大嫌いだよ、二人とも。
お幸せにね。