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 それは、チンクの古い記憶―― 
 
 チンクは痛みを堪えて、片目を押さえていた。
 トーレとクアットロを前に、チンクは告げる。
「私に後退など必要ない」
「お前にとって必要か否かを問うているのではない。お前が我らの邪魔になるから退けと言っている」
 トーレの鋭い物言いに、クアットロが首を傾げていた。
「別にいいじゃありませんか、トーレお姉さま。チンクちゃんのことだから、私たちの邪魔なんてせずにおとなしくしてくれますわ。ねぇ、チンクちゃん」
「……クアットロの言うとおりだ、トーレ。自分が戦闘の邪魔になると判断すれば、すぐさま退く」
「それほど、奴らが気になるのか?」
 チンクはうなずいた。実のところ、自分でもよくわからない感情ではあるのだ。
 片目を奪ったゼスト、その両腕とも言えるメガーヌ、クイント。三人はAMF下にありながら、戦闘機人である自分たちと互角の戦いを繰り広げた。いや、互角以上だったのかも知れない。少しどこかがずれていれば、ここに倒れているのは自分たち三人だったのかも知れない。少なくともチンクにはそう思えるのだ。
 辛うじてゼストを倒したのはいいが、その代償に自分は片目を失った。片目を失ったのは、紛れもない自分の慢心だとチンクは悟った。自分たちが三人に対して絶対に有利だと思っていたのだ。
 人間を越えた存在であるはずの戦闘機人である自分、AMF下で能力を制限された魔道師。勝負の行方は歴然のはずだった。しかし、ゼストはあと一歩まで自分を追いつめたのだ。
 そして今、ゼストは倒れ、メガーヌとクイントがその身体を両側から支え撤退しようとしている。それを追撃しているのはクアットロの指揮するガジェットの群れだ。それでも、このままでは敵の撤退は成功してしまうだろう。それを防ぐのが、自分たちの役目なのだ。
「いいわ。さっさと終わらせちゃいましょう」
 クアットロがガジェットに新たな指示を出す。
「クアットロにお任せしてくださいな♪」
「ああ、任せる」
 トーレはやや嫌そうに答えた。
「トーレ?」
「……何も言うな、チンク。この手の任務ではクアットロの策が有効だ。私には正面切った戦いしかできんし、それを改めるつもりもない」
 
 チンクは戦いの顛末を見た。
 クアットロはISシルバーカーテンを利用した子供の幻影を使ってクイントを殺害し、メガーヌを捕らえたのだ。
 自分には無理な策だと思った。しかし、どれほど汚いと思える策であっても、それがドクターのためだとクアットロが信じていることも理解していた。
 ……私は、自分の手を汚す勇気も持ち合わせていないのか。
 自らを汚すことも厭わない。それがクアットロの強さだ。とチンクは心から思っていた。そしてそれは、ドクターのためには確実に必要になるものではないのだろうか、自分などよりも。
「クアットロは強いな」
「あら、チンクちゃん。心にもないことなんて。煽てても何も出ませんよ?」
 何を、と言いかけてチンクはクアットロを見上げる。
 その目に映る自分の姿に、突然チンクは理解した。
 ……ああ、そうなのか
 クアットロも同じ事を思っている。
 自分がクアットロを恐れるように、クアットロは自分を恐れているのだ。
 
 
 
魔法少女リリカルなのはIrregularS
第十一話
「チンクの夢 ノーヴェの現実」
 
 
 
 ノーヴェはスバルに抵抗する。
「スバル! 戻れよ! 戻ってくれ!」
「嫌だ!」
 スバルは片腕を失ったノーヴェを、半ば引きずるようにして強引に進む。
「チンク姉が……」
「チンクは大丈夫。ハーヴェストになんて負けない」
「なんで、そんなことがわかるんだよ!」
 チンクが自分を騙した。その事実がノーヴェを混乱させていた。
 本当に勝てるという自信があるのなら、自分たちを先に行かせる必要などないではないか。自分たちだけにルーテシアとキャロを助けに行かせる理由などないではないか。
「わかるよ」
「なんでだよ!」
 もう同じ事はしたくない。あの時、ギンガを倒したチンクはスバルの振動破砕に敗れ、セインのおかげで辛くも逃げ出すことができたのだ。破壊されたチンクを見たときの衝撃を、ノーヴェは一生忘れないだろう。
「ノーヴェは、信じないの?」
「え?」
「あたしはチンクを信じる。だから、今は二人を助けることに全力を傾ける」
 スバルは振り向きもせず、走り続けている。
「離してくれ」
 その口調が今までとは違うことにスバルは気付いた。
「ノーヴェ?」
「あたしは、自分で走れる」
「うん」
 スバルの手から離れたノーヴェは走り出し、スバルも追走する。
「とっととルーテシアを助けて、チンク姉の所に戻るぞ!」
「うんっ!」
 
 そして、スバルとノーヴェの去った場所では、二人の戦闘機人が互いの出方を窺うように牽制し合っていた。
 ハーヴェストは動かない。ただ、チンクの方を見ているだけ。
「出方を待っているのか、時間を稼いでいるのか。どちらにしろ無駄なことですよ。チンクお姉さま」
「私が教育を担当していれば、その鼻っ柱を真っ先に折っていたところだ。傲慢は何よりも恐ろしい敵になる」
「そうだとしたら、私が最初に殺したナンバーズはトーレお姉さまではなくなっていたでしょうね」
「姉妹を平気で殺すか……。不良品と呼ばれても、仕方あるまい」
「だったら、クアットロ様も不良品ですか?」
「そう認めざるを得ないな」
「やはり、私の思ったとおりでしたね」
 チンクは、ハーヴェストの言葉に耳を疑った。彼女もまた、クアットロの行動に不審を抱いているのだろうか。
「クアットロ様を不良品だと認識する貴方達。そして同じ姿を見ていながら認識しない私。ここから引き出される結論は一つ。すなわち、正常なナンバーズはすでに私とクアットロ様しかいない。ですから、私たちが護らなければならない。ナンバーズの誇りを」
 あまりの言葉に、チンクの返す口調には笑いすらにじむ。
「誇り? そんなものが……」
「認められないのは貴方が弱いから。私たちの誇りは強さ。強者の権利を振りかざすこと。誰よりも強くあること。弱者を踏みにじり、君臨すること」
「だとすれば……」
 スティンガーが一本、チンクの右腕に閃いた。
「ここで負けるお前に、その誇りを振りかざす権利などない」
 飛来するスティンガーをこともなげにレイブレイズで弾くハーヴェスト。
「何人たりとも、いかなる攻撃たりとも、私に近づくことは不可能です」
「私は、セッテとディードからお前との戦闘経験を受け継いでいる。それがどういう意味か、お前も戦闘機人の端くれならわかるだろう」
 姉妹間でのデータの蓄積と継承。
 訓練ではほとんど使われていない能力だ。たとえば、ディエチの砲撃特化能力を砲撃武装を持たないディードが継承しても意味はない。かといって、同じ砲撃担当のウェンディが継承すれば意味があるのか言うと、そうでもないのだ。イノーメスカノンの砲撃とライディングボードの砲撃は全く異なるものであり、片方の経験がそのまま移行できるというものではないのだ。
 それぞれの武装がそれぞれに特化している限りは、蓄積と継承はそれほど大きなアドバンテージとはなり得ない。そのことにはスカリエッティがすでに気付いていた。あくまでも、蓄積と継承の重要性は基礎の体術などだけに限定されるのだ。
 しかし、特定対象との具体的な戦闘経験となれば話は別になる。チンクはセッテとディードのデータから、ハーヴェストのISを研究していた。
 いかに戦うか。そして、いかに破るか。
 一対一でハーヴェストに勝ち目があるのは自分しかいない、とチンクは結論していた。
 多数で囲むことのできる相手ではないだろう。数を頼めば、向こうもコピー戦闘機人を繰り出してくるだけのことだ。こちらが一である限り、ハーヴェストも基本的には一で対抗するだろう。それだけの自信はあるだろうし、実力もある。
 接近戦特化はいかなる形でも論外だ。レイブレイズによる回転球をかいくぐることはまず不可能。おそらくチンクの知る限り最も高速戦闘に慣れているフェイトでも無理だろう。
 かといって、ディエチのような砲撃特化でも無理だ。レイブレイズは、イノーメスカノンによる最大の砲撃すら防御してのけることができるだろう。おそらくは、なのはのディバインバスターすら。
 回転球をかいくぐって打撃をくわえることのできる者。
 そこまで考えたとき、チンクはセインが最初に狙われた理由を改めて知ったのだ。ハーヴェスト相手には、ディープダイバーだけが最も単純で有効な手となる。しかし、今のセインに戦闘は無理だ。
 それでも、相撃ちを狙えば……
 自分に勝ち目があるのは事実だった。負けるために戦っているのではない。ただ、最大限にうまくいったとしても、それがほとんど相撃ちに近いということもチンクは理解していた。
 それは構わない。
「無様に負けた経験など、何の役に立つのですか?」
「それは、これからわかる」
 チンクは再びスティンガーを構えた。
「行くぞ。ハーヴェスト」
「ええ。姉様」
 
 エリオはコピーフェイトと相対している。
 しかし、コピーフェイトは今のエリオの敵ではない。初見では衝撃の方が大きかっただけのことだ。
 それはライナーズも同じだった。
 これが本物のセッテやフェイトなら、エリオもただでは済まないだろう。しかし、コピー相手では格が違いすぎる。
「疲れさせて隙を狙うのか? せこいじゃないか、俺のくせに。それとも、そのせこさはスカリエッティ譲りか?」
「好きに言えばいい。僕はただ、確実に勝ちたいだけだからね」
「そうかい」
 SONIC MOVE
 距離を取ったエリオが、ストラーダを背負うように腕を回す。
「だったら、俺も少しは楽させてもらっていいな」
 竜の咆哮が響く。
「竜魂召喚! 吼えろっ、フリード!」
 BLAST RAY
 フリードの口から、燃え上がる炎がコピーの密集群のど真ん中に放たれ、触れた部分が爆発する。
 陣形を乱したそこへ、
 THUNDER BLADE
 突き刺さる、魔法により作られた電撃の剣。
「ブレイク!」
 その連鎖攻撃をコピーたちはまともに受けていた。爆炎に包まれ、次に剣を突き立てられ、さらに剣はエリオの合図で破裂放電する。
 炎と雷の嵐に巻き込まれ、次々と落下していくコピー群。そして、エリオは白銀の竜騎士として再びローヴェンに向き直る。
「……いいなぁ、フリードか……僕も似たような竜が欲しいな。君を殺してキャロを僕のものにすれば、僕に懐いてくれるかな?」
「噛み殺される前にやめておけ」
「そうか。存外につまらないんだな」
 ローヴェンはデバイスを構える。ストラーダに瓜二つのデバイスを。
「いいさ。そいつもコピーしてやる。そうだな、改造して戦闘機竜なんてどうだ?」
「馬鹿の一つ覚えは結構だ」
 ストラーダのモードが替わる。
「コピーはもういい。自分でかかってこい」
「……僕がかかっていかないのは、君への優しさのつもりなんだが」
 SONIC MOVE
 一瞬遅れ、エリオが同じ高速移動魔法を発動する。
 次の瞬間、弾き飛ばされたのはエリオ。さらに、飛ばされた先にローヴェンが先行、逆方向へエリオを弾く。
 フリードのブラストフレアの牽制で辛うじて体勢を立て直すエリオ。
 ……圧倒的な速度差?
 エリオの視線がローヴェンのデバイスに向く。
 ……デバイスによる発動と自らの発動で二段階のソニックムーブ?
 エリオ自身にも不可能ではない。しかし、エリオの勘が告げていた。否、と。
 単純に二倍の速度差ではない。あえて言うなら三段階。三段階のソニックムーブとしか思えない差だ。仮に可能だとしても、三段階まで加速するとエリオの神経では対処できない速度になる。
 だが、スカリエッティの頭脳を持つ者には可能なのだろうか。
「やっぱり邪魔だな。そのチビ竜は」
 デバイスがフリードに向けられる。
 SPEERANGRIFF
 近すぎる。突進系の技であれば、加速が足りなければ避けることは容易い。
 エリオはフリードがその技を自ら避けるに任せて、避けられたローヴェンが通り過ぎた瞬間を狙い、振り向いた。
 目が合う。なぜか、行きすぎたはずのデバイスが進行方向の逆……こちらを向いていた。
「馬鹿だな、君は」
 THUNDER RAGE
 フリードに突きつけられたデバイスの先端が電撃を放ち、肉と空気の灼ける嫌な臭いが辺りに充満する。
 苦痛の叫びをあげるフリード。同時にエリオも電撃を浴びていた。自らの能力からしてある程度の電撃耐性を持つエリオですら耐えきれるかどうか定かではない、大容量の電撃である。
 ……デバイスが……二本!?
「三段階のソニックムーブで気付かなかったかい?」
「が……っ……二つ……?」
 落ちていくフリード、一拍おいて後を追うようにエリオの身体も落下していく。
 それを追うローヴェン。
「逃げるなよ、偽者」
「舐めるなっ!」
 突き出されたローヴェンの槍を受けると、もう一本の槍がエリオの落下を速めるように叩きつけられる。
 さらにもう一度。
 同等の技量を持った者の操る連動した二本の槍を一本の槍でさばけるわけがない。
 落下しながら、為す術もなくエリオは打たれ続けていた。
 しかし地に叩きつけられる寸前、我が身よりも先にストラーダを地に叩きつけて一瞬跳ぶ。わずかに反応の遅れたローヴェンの前から身を捻り、やや離れた位置にエリオはなんとか着地する。
 傷ついたフリードは地に伏せていた。しばらくは戦闘に参加できるような状態ではない。電撃をまともに受けたのだ。
 エリオはストラーダを構える。
 ……フェイトさんのコピー、なのはさんのコピー、はやてさんのコピー。皆、昔のコピーだ。だったら、こいつだって……
 おそらくローヴェンが使えるのは、生まれ持った電撃特性に関する技のみ。エリオが魔力とは関係なく習得した技を使える道理はない。
 エリオはストラーダを握りなおした。
 ローヴェンは、そのエリオを興味深げに眺めていた。
 二体のコピーフェイトがその両脇に立つ。
「そんなに抗わない方がいい。どうせなら僕よりも、美人の母親もどきに殺されたいだろう?」
「……フェイトさんは、僕とキャロの母さんだ」
「それは間違いだ」
 ローヴェンは肩をすくめる。
「確かに君の母だが、キャロの母ではないよ」
「どういう意味だ!」
「さっきも言っただろう? 魔力変換資質だよ。まさか、フェイトと同じ能力なのが偶然だとでも?」
「電気の魔力変換資質を持つ魔道師がこの世に何人いると思ってる」
「プロジェクトF・A・T・E。完成させたのはプレシア・テスタロッサ。しかし、基礎を作ったのはジェイル・スカリエッティだろう? プレシアはその基礎を引き継いだだけ」
 ローヴェンは、左手の槍を立てる。
「さて、ここで疑問が一つ。引き継いだのは本当にプレシア・テスタロッサだけなのか? もし、管理局の一部にその技術が引き継がれていたとすれば?」
「戯言はやめろ!」
「事実だよ。ごくごく単純な。フェイト・テスタロッサはクローンとしては成功だったが、いくつかの弱点もあった。戦闘用人造魔道師としては致命的なのは、自我が薄弱なところだ……もっとも、今となってはそれも、許容範囲内での発達の遅れだということがわかったがね。いや、成長した彼女はたいした物だよ」
「黙れ」
「そこで、フェイト・テスタロッサの存在を知った管理局は考えた。彼女と別の誰かを配合すれば、もっといい魔道師ができるかも知れない。遺伝子が上手く適合して、彼女の小さな欠点のいくつか、不完全な部分を埋めることのできる遺伝子を探せばいい」
「黙れと言っている」
「ちょうどいい人物が見つかってね。そこで誰かがちょっとした悪戯を思いついた。そうだ、アリシア・テスタロッサと同じ道を辿ってもらおう、と」
「黙れと言ってるんだ!」
「死んでもらったんだ。エリオ・モンディアルには」
「やめろ!」
「金持ちは違うね。詳細を隠した怪しげな話にすぐに飛びついて、資金提供までしてくれた。おかげで、フェイト・テスタロッサとエリオ・モンディアルの遺伝子を配合したクローンをすぐに作り出すことができた。……それが僕。そして……」
 嬉しそうに笑うローヴェン。
「君だ。もっとも、正確には僕は、そのデータを入手したクアットロに作られた完成体だけどね」
「嘘だ」
「喜べよ。君はある意味、フェイトの実子なんだ」
 歯を食いしばり、しかしエリオは言う。
「……嘘だ…」
 嘘だ。と叫びたかった。
 フェイトを実の母のように思っていた。いや、実の母以上だと思っていた。しかし、これは違う。
 何かが、ひどく間違っている。
 実の息子相手のように愛を注いでくれた人。実の母に対するように応えようと思った自分。
 それが、互いの知らない実の親子だった。それも、遺伝子上の。
 違う。
 これでは、ただの道化ではないか。
 その思いを読みとり逆撫でするように、さらにローヴェンは笑った。
「嘘だと信じたいんだろ。生きて帰れたら、遺伝子走査でも何でも好きにすればいいさ」
「やってやるさ! 貴様を倒してから!」
 ストラーダが唸りをあげ、エリオの足が地を蹴った。
 
 スバルとノーヴェは、キャロとルーテシアのいる一室に辿り着こうとしていた。微かな魔力反応を追って、二人は奥深くへと侵入していたのだ。
 進むに連れて二人の表情は険しくなっていく。しかしノーヴェはスバルを、そしてスバルはノーヴェの表情の変化を訝しげに見ていた。
 そう。二人は別の理由で、それも「相手にはわからないはずの理由」で警戒を続けていたのだ。
 スバルは、周囲の光景に既視感を覚えていた。
 ……似ている
 これはまるで、かつての戦いでなのはさんと部隊長を救出するためにティアと一緒に突入した場所ではないか。
 この通路の壁、色、明かり。
 何故、これほど酷似しているのか。
 これではまるで……
 ……ゆりかご内部じゃないか
 そしてノーヴェは、罠どころか迎撃さえないことに危惧を覚えていた。
 ……何もない
 こちらがクアットロの裏をかいたわけではないのだ。チンク姉が一人残ったのは確かに予想外だが、それはあくまでもノーヴェにとっての予想外だ。クアットロならばその程度は予想の範疇だろう。何らかの対策はあるはずだった。
 それが何もない。
 スバルも自分も、妨害らしい妨害を全く受けずに侵入しているのだ。
 考えられるとすれば二つ。
 一つはこの後、キャロやルーテシアを発見するときが罠であること。
 あるいはもう一つ……ノーヴェにとっては最も嫌な想像だ。
 キャロやルーテシアを救出されることなど、クアットロにとっては痛手でもなんでもないこと。いや、救出という手間をかけた分だけ、こちらが不利になるように仕向けられているのではないかということ。
 やがて、スバルとノーヴェはほとんど同時に立ち止まる。
 二人の目の前の扉の奥から、微弱な魔力反応とデバイスの反応があるのだ。
 一つはケリュケイオン、そしてもう一つはアスクレピオス。
「ここだね」
「ああ。間違いない」
 構えるノーヴェ。スバルがゆっくりとドアに触れる。
「あれ?」
「どうした?」
「開いてる?」
 何の抵抗もなく、触れただけでドアは自動に開く。ルーテシアとキャロが閉じこめられているはずなのに。
 中を覗き込んだスバルが拳を握りしめた。ノーヴェも部屋を覗き込み、顔をしかめた。
 ルーテシアとキャロが倒れている。二人とも、意識はあるようだが身体が動いていない。
 すぐに駆け出すノーヴェ。スバルはルーテシアを助け起こす。
 と、ルーテシアの足下に無造作に置かれたメモに気付く。
“二人が投与されているのはただの麻痺薬。一日は薬の効果は抜けません。治療魔法も役には立ちません。だけど、担いでいけば充分に助けられますよ。足手まといを連れて頑張ってくださいね。ファーイトっ♪ by クアットロ”
 思わず、メモごと床を殴りつけるスバル。
「……ルーテシア、キャロ、絶対助けるからね!」
「……命……令……置い……ていきな……」
「聞こえないから関係ないよ」
 ノーヴェがキャロを抱き起こす。
「……スバル。あたしの背中にどっちか一人をくくりつけてくれ」
「ノーヴェ?」
「悔しいけど、今の状態だとお前のほうが強い。お前には振動拳もディバインバスターもあるだろ。だから、身軽でいなきゃ駄目だ」
 言葉を失うスバルに、ノーヴェは叫ぶ。
「あたしは、どうせ腕一本なくなってんだ、ロクに戦えねえよ! その代わり、死んでも二人を運びきるからな!」
「わかった。任せるよ、ノーヴェ」
「ああ、任せとけ」
 小柄なキャロの方を背中におぶるようにくくり、残った片腕でルーテシアを抱えるノーヴェ。
「一つ言っておく。多分、これはクアットロの罠だ」
 皆まで言わずとも、スバルはうなずいた。
 わざと足手まといとなる二人を運ばせて、助けに来た人間の機動力を削ぐ。たしかに、クアットロの考えそうなことだった。
「だけど、この罠を突破する。絶対に」
「勿論」
「だから、あたしは少なくともここを出るまでは突っ走る」
「わかってる。あたしは邪魔するやつを一人残らず倒す」
 走り出そうとしたスバルを引き留めるノーヴェ。
「もう一つだ」
「なに?」
「二人は必ず助ける。そして、あたしもお前も無事に戻る。それで作戦成功だ。お前も……欠けちゃ駄目なんだ」
 そして、チンク姉を助ける。とノーヴェは宣言した。
「いいな?」
「ん……」
 スバルの微妙な顔に、ノーヴェは顔をしかめる。
「何か言いたいのか?」
「いや、今、なんか……ノーヴェがギン姉に見えた」
「馬鹿」
 
 チンクの投げた十数本目のスティンガーが弾き飛ばされていた。
 一本たりとも、ハーヴェストには掠りもしていない。全てがレイブレイズに阻止されているのだ。
 逆に、連続攻撃の合間の反撃をチンクは避け切れなかった。
 致命傷こそ今のところはないが、それも時間の問題だろう。現状では、チンクは弄ばれているといってもいい状態だった。
 チンクの全ての手は封じられ、ハーヴェストからの攻撃は避けるのが精一杯。身体中の至る所には避けきれなかった攻撃による傷が見える。チンクの身体は流血で真っ赤に染まっていた。
 荒くなった息を必死で整えながら、チンクはハーヴェストの動きから目を離さない。一瞬でも目を離せば、レイブレイズが死角から伸びてくるのだ。
 今コピーが戦いに参加すれば、チンクは瞬殺だろう。レイブレイズに打ち砕かれるか、レイブレイズを避けてコピーの攻撃に晒されるか、二つに一つしかないのだ。
「つまらない戦いです。もしかして、ノーヴェ姉様とスバルの帰還を待っておられるのですか? それとも、援軍の到着ですか?」
「言ったはずだ。私がお前を倒すと」
「……もう、結構です。死んでください」
 ハーヴェストの背後に、クローラーズが並ぶ。
 ……ああ、ドゥーエ、トーレ、ウェンディ、オットー、わかってる。そう急がせるな……
 チンクは走った。何も構えず、ただがむしゃらに、ハーヴェストへと。
 一瞬、ハーヴェストが虚をつかれた。しかし、あくまでも一瞬。それでも、ハーヴェストはその場を動かない。
 立ったまま、チンクを待った。クローラーズもそれぞれが下がっていく。
「まさか命を捨てて突撃? しかる後に相撃ちなどという虫のいい、安易な結末をお望みですか?」
 だとしたら……
 ISレイブレイズ
 光条の力場が螺旋を描いて、ハーヴェストの姿を包み込むように展開していく。
 あらゆる攻撃を無効化する、力場による障壁。
 計算上は、なのはのディバインバスターすら正面から無効化するほどのものだ。ランブルデトネイターの破壊力ではどうにもならないだろう。
「失望しました。チンク姉様」
「そうだな。安易だな」
 チンクはハーヴェストの目前で飛んだ。
 戦闘データからレイブレイズによる障壁の性質はわかっている。あくまで、帯状の力場の回転による障壁であり、プリズナーボックスのように実際に壁が形成されるわけではない。
 ならば、その回転につけいる隙がある。
 片手で同時に持てる最大数のスティンガーを出現させ、投げるというよりも手刀をもって突き刺すように持ち替えて、手を伸ばす。
 無理矢理に押し込んでくる。と判断したハーヴェストがあえて前に進んだ。これでレイブレイズの回転の範囲内にチンクの腕が入る。つまり、切り刻まれる。
 ハーヴェストの嘲笑を、さらなるチンクの笑みが消した。
「スペックは知らず、戦術は私の方が上だな」
 殴りつけるように右拳を振るうチンク。その拳の先にはスティンガーが。
 逆向きに。
 すでにチンクの拳に突き刺さっているスティンガーが。
「舐めるなっ!」
 ハーヴェストの怒声とともに、二つ目のレイブレイズがチンクを突き飛ばすように胸元へと伸びる。
 一瞬先駆けて、
 ISランブルデトネイター
 ハーヴェストの目前、頭の斜め上でチンクの拳が爆発。たまらず背後へよろめくハーヴェスト。
 チンクは爆風で着地し、さらにその反動で再び前へ、ハーヴェストへと飛ぶ。
 残った左手に今度こそ正向きのスティンガーを、投げずに、その腕でハーヴェストに叩き込む。
 しかし、ハーヴェストは笑う。
「舐めるなと言ったっ!」
「あぁああぁああああっ!!」
 凄まじい叫びが轟いた。
 それは、生きたまま片腕をミキサーにかけられる苦痛の叫び。
 回転球が、チンクの左腕を噛み砕くように飲み込んでいた。
「私のレイブレイズが、一撃ごときで壊れるかっ!」
 進むハーヴェスト。苦し紛れに振るったチンクの、すでに肘までしかない右腕すら飲み込んで回転球が回る。
 あまりの苦痛にあがくチンク。無意識にか、振った両足も巻き込まれていく。
 次に左足を、そして右足を。
 チンクの四肢を噛み砕いて進むハーヴェスト。
 そして、チンクは地面に投げ出される。
「あ……く………」
 苦痛か、それとも敗北の衝撃か、震える声のチンクをハーヴェストは回転を止めて見下ろしていた。
 チンクの砕かれた四肢、その血肉を全身に浴びながら、ハーヴェストは立っていた。チンクを見下ろし、嗜虐の笑みを浮かべて。
 誰もがこのとき、確信しただろう。
 ああ、彼女こそ、真にクアットロの姉妹なのだと。
「……次は、目をえぐりましょうか? チンク姉様。喉は最後まで残しておきましょう。姉様の悲鳴が轟くように。耳も、最後まで残しておきましょう。他の姉様の悲鳴が聞こえるように」
 チンクを蹴り飛ばす。
「どなたにします? ノーヴェお姉さま? ディエチお姉さま? それともスバル? あるいはルーテシア?」
「……リクエストか? クアットロか、ハーヴェストだ」
 チンクは笑おうとした。しかし、うまくいかない。
「つまらないですわ、お姉さま」
「……もう、勝負はついてるんだぞ。降伏しろ」
「しつこい冗談は嫌いです」
「好意で教えてやる。よく聞け。ランブルデトネイターは任意で、仕掛けた順番とは関係なく爆破できる。そして、爆破できるのはスティンガーだけじゃない。ある程度の大きさの金属片だ。だから、降伏しろ。私たちは殺し屋じゃない。できるなら逮捕したいんだ」
「訳のわからな……」
 言いかけて、ハーヴェストは己の手を見た。
 チンクの血肉にまみれた手。
「……まさか……」
 チンクは笑う。やっぱり、うまくいかない。
「私たちは戦闘機人だ。体内に金属片を仕込むなんて、簡単じゃないか」
 ISランブルデトネイター
 ハーヴェストの身体中に巻き散らかされていたチンクの身体の一部が、次々と爆発を起こす。
 右腕を犠牲にしたランブルデトネイターがすでに見せ技だった。チンクの狙いは、最初から自分の身体を刻ませ、ハーヴェストの身体のあちこちに金属片を散らすことだったのだ。
 一つ一つの爆発はそれほどではないが、連鎖的に上半身を焼き尽くされたハーヴェストはたまらず倒れる。
「……」
 チンクは、空を見ていた。
 ありがたい、と思う。
 この周辺にはライナーズはいない。空を見るのに邪魔になる敵影はないのだ。
 クローラーズの近づくのが視界の隅に見える。
 ノーヴェのコピーに殴り殺される。それは面白い皮肉だ。クローラーズは、クイントのコピーのコピーだ。だったら、自分は殺されても文句を言える筋合いではあるまい。
 ……今日は、死ぬにはいい日だ
 チンクは、空を見上げていた。
 どうせもう、ほとんど見えない。
 できれば、最後の瞬間は空が見たかった、とチンクは少し残念に思う。
 ……もう、夢は見なくていいんだな。
 それが、ひどく自由に思えた。
 そのとき何かが、視界に入った。
 クローラーズか。
 精々、あっさり殴り殺してくれればありがたい。そう言いかけて、話すことができないことに気付いた。
「チンク!」
 ……馬鹿馬鹿しい
 チンクは、自分の見えたものに苦笑していた。
 クイントが、こんな所に現れるわけがない。
 それとも、迎えに来たのだろうか?
「馬鹿!」
 自分の身体が浮いたような気がした。
 
 エリオは、地にしっかりと踏ん張った。
「あああああああああっ!!」
 全ての魔力をストラーダに込める。
 どんな攻撃もいなされるのなら、二倍の手数で反撃されるなら。
 最強の一撃を放つ。 
 シグナムから習い覚えた技。今の自分にとっての最強にして最大の技。
「必殺技ってやつかな?」
 ローヴェンは涼しい顔でデバイスを構えている。
「来いよ。あらゆる面で、君を打ち崩してみせる」
 その言葉に対する憤怒すら、エリオは攻撃力に転換しようとする。
「……行くぞ……」
 ローヴェンは優雅にうなずいた。
 エリオが文字通り地を蹴った。空気の焦げる臭いすら発しながら、電撃がストラーダに集束していく。
「紫電一閃!」
 ローヴェンの左手が無造作にストラーダを弾く。
「……こうか?」
 ストラーダを弾いたデバイス。その逆に持ったデバイスが瞬時に電撃を蓄積する。
「今のなんだっけ? ああ、紫電一閃?」
 動けないエリオの胸元を、圧力と雷の奔流が貫く。
 苦痛よりも、電撃よりも、精神的なショックがエリオの表情を歪めていた。
 あっさりと。あまりにもあっさりと。
 ローヴェンはエリオの紫電一閃を防いだ。
 エリオはローヴェンの紫電一閃を防げなかった。
 あまりにも、わかりやすい力量差だった。
 ……俺……? 
 ストラーダがエリオの手からこぼれる。
 ……何やってんだ?
 ルーテシアを救う?
 キャロを救う?
 仲間をこれ以上傷つけない?
 ……どうやって?
 こんなに、弱いのに。
「だから君は、不完全なんだよ。未完成なんだよ」
 ……そうか……
 ……それなら……
 不思議な開放感が、エリオの身体を包んでいた。
 ……楽になるのか?
 意識が薄れていくのを、エリオは感じていた。
 
 スバルとノーヴェは元のハッチから出る。
 帰り道でも、罠どころか敵の姿もなかった。
 しかし外に出た瞬間から、当たり前のように敵は多い。
「スバル! あっちだ」
 ノーヴェの示す方向に、無惨な姿で倒れるチンクをスバルも確認する。そして、その姿を取り囲むクローラーズ。
「チンク姉!」
 この距離では、間に合わない。
 しかし、スバルは叫ぶ。
 チンクの向こう、高速で駆け寄る二つの姿に。
「ギン姉! ザフィーラさん!」
 鋼の軛がクローラーズを一気に吹き飛ばし、ギンガがチンクを抱き上げる。
「チンクの馬鹿!」
 ギンガはチンクの軽すぎる体を抱きしめていた。
「……ノーヴェやディエチ、ウェンディを置いていくつもり? 姉として、そんな無責任は絶対許しませんからね!」
 ギンガとザフィーラはそのままスバルたちに合流する。
「シグナムとアギトは、スクライアとともにシャマルたちの支援に向かった。しかし、コピーの数が多すぎて突破できんらしい。しかし、主ももうすぐ来られるはずだ。形勢は決して悪くない」
 ザフィーラが人型に変わり、ルーテシアをノーヴェから抱き上げる。
「キャロも私が運ぶ。私の方がお前より力は強いからな」
 気絶したチンクは、ノーヴェが断固運ぶと主張した。
「スバル。この中なら指揮権はお前だ。後の指示を頼む」
 ザフィーラの言葉に、スバルは慌てて周囲を見渡す。
 確かに、その通りだった。指揮官は誰もいないのだ。
 少しだけ、スバルは考える。
「あたしとギン姉は隊長に合流します。ザフィーラさんとノーヴェはルーテシアさんとキャロをジュニアの所に」
「ハーヴェストはどうする?」
「バインドして連れて行くしかないと思います。お願いできますか?」
「了解した」
 どくん
 ザフィーラが辺りを見回す。
「今の音は?」
「音?」
「ああ。今、心臓の鼓動のような音が」
 どくん
「聞こえた……」
「それじゃあ、そろそろ切り札と行きましょうかしら♪」
 突然聞こえるクアットロの声に、一同は構え、辺りを見渡す。
「……実体は無しで声だけを送っているな」
「多分、地下に基地があると思います」
 スバルは自分が地下でゆりかごのようだと感じたことを伝える。
「だけど、切り札って……ハーヴェストのことじゃなかったのか?」
「その声はノーヴェちゃん? 不正解です〜♪」
 地面が震える。
 ギンガが驚きの叫びをあげた。
 地面から持ち上がる、不気味な肉塊。いや、どこか見覚えのある、何かを不気味に戯画化した塊。
「……嘘」
 スバルが自分の見た物を否定するように首を振る。
 肉塊は、地面の至る所を埋め尽くさんばかりに発生していた。いや、すでにそこにあるのは地面ではない。あえて言うならば、そこにあるのは肉面であった。
 持ち上がり、三つの穴をもったやや大きい球が先端に。そしてその根本には金属製の棒のような物を持った突起物が発生する。
 誰が気付くのだろうか。
 その球が頭であること。
 突起物が一本だけの手であること。
 金属の棒が、簡易デバイスであること。
 そして、その球には微かな特徴があった。
「これか……」
 ザフィーラが呟き、ギンガが息を呑んだ。
 そして、スバルが哀しそうに言う。
「……なのはさんのコピー……」
 コピーたちはけたたましく笑い出した。
 DIDIDIDIDIDIVVVVVVIIIIINNNNNNNEEEE
 金属を削る音と電気ノイズがきしみ混ざったような、不快な不協和音。
 BBBBBBBBUUUUSSSSSTTEEERRRRR
 うつろな瞳が狂った笑いを生み出しながら、デバイスが光り輝く。
「シールドだ!」
 ザフィーラの言葉に、全員がとっさにシールドを張った。
 DIVINE BUSTER
 数十のディバインバスターがスバルたちへと放たれる。
「くっ……何度もは耐えられんぞ!」
「スバル! コピーを破壊するわよ!」
 スバルとギンガは辺りのコピーに殴りかかる。
 防御を全く考えていないコピーたちは瞬時に破壊されるが、破壊されればそこには倍の数がコピーされる。
 倒せば倒すほど、新しいコピーが生まれる。そして、コピーたちは次々とディバインバスターを放つ。
 避け、防御し、それでもコピーを倒し続ける一同。しかし、きりがないのは一目瞭然だった。
 スバルは撤退命令を出そうとしてはたと止まる。
 空を飛べるのは、ザフィーラだけ。
 ギンガも自分もノーヴェも、エアライナーやウィングロードをディバインバスターで撃たれては動けないに等しい。
「ザフィーラさん! ルーテシアさんとキャロ、チンクを連れて逃げて!」
 三人は残るしかない。ここで、できるだけのコピーを叩きつぶす。
 ザフィーラに否はない。というより、この場で他にとれる方策などないのだ。
 おそらくは、シグナムたちも同じ攻撃を受けているだろう。
 できる限りの速度で飛び去っていくザフィーラを背中で見送りながら、スバルはギンガとノーヴェに目をやった。
「……ごめん、ギン姉。ノーヴェ」
「帰ったら、アイス奢りね?」
「あたしは、パフェな」
 
 
 
 まず、片腕を失っていたノーヴェが脱落した。
 そして、ノーヴェを庇ったギンガ。
 二人を背後に置き、スバルはそれでも立ち向かっていた。しかし、二人を庇うため避けることもできずに受け続けるだけでは、消耗していく他はない。
 時間の問題だった。
「……ごめん……ギン姉、ノーヴェ」
 二人からの返事はない。
 シールドを張り損ねた瞬間に、ディバインバスターの衝撃が全身を襲った。
 本物には及ばないとは言っても、単に一撃ではない。一撃受ければ、次々と追撃が来るのだ。
 立ち上がろうとした腹へ。
 避けようとした背中へ。
 地面に倒れ伏せ、スバルはそれでも立ち上がろうともがく。
 立ち上がろうと手をついた場所に、新しいコピーが生まれていた。
 顔の正面をディバインバスターが襲う。
 ……終わった……
 スバルはその瞬間、生まれて初めて、生を諦めた。
 
 
 
 
 
 次回予告
???「遅れてごめん、スバル。
  次回、魔法少女リリカルなのはIrregularS 第十二話『エースの帰還』 
  行くよ、全力全開! IRREGULARS ASSEMBLE!」
 
 
 
 

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