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ヴォルケン会議
 
 
 
 ある夜――
 ミッドチルダはクラナガン、八神家にて――
 
 家主はやて(とリイン)の就寝中に密かに集う四つの影。
 
「では、烈火の将の名において、今年度第一回のヴォルケン会議を開催することを、ここに宣言する」
「司会は私、湖の騎士シャマルが勤めさせていただきます」
「二人とも、なんでそんな大袈裟なんだよ」
「がう」
「おめーは人型になれ」
(別にかまわんだろう、意思の疎通自体は念話で充分なのだから)
「そういう問題じゃないだろ。シグナムもシャマルもちゃんと形式を重んじているんだから。礼儀だ礼儀」
「ああ、別にそれくらいかまわんぞ」
「ええ、構わないわよ」
「なんで、それはオッケーなんだよ。だったら、あたしだって、堅苦しいのは嫌だからな」
「しかしヴィータ、一つ注意しておくぞ」
「なんだよ」
「リラックスといっても、いくらなんでも限度というものがあるからな」
「ああ。どれくらいだよ」
「そうだな、せいぜい、獣型になるくらいだな」
「そんなことするの、ザフィーラしかいねーじゃん!!」
「あまいわね、ヴィータちゃん。シグナムは時々ケダモノになるわよ。うふふ」
「ああ、テスタロッサの夜更かしの相手をするときはな」
「何か今、聞き捨てならないこと言っただろーーー!」
「落ち着けヴィータ。これはプライベートでの話だ」
「余計まずいだろがっ!」
「あと、高町には内緒だ」
「だからまずいっての!!」
「ああ、私だって相手がいればなぁ…ケダモノにだって獲物にだってなってあげるのに」
「そこの欲求不満! なに言い始めてんだっ!」
「そうね、クロノ提督なんてどうかしら。不倫は燃えるわよ」
「聞いてねえよっ!」
「ごめんなさい。燃えるじゃなくて、萌える、のほうかしら」
「どっちでもいいよっ!!」
(落ち着け、ヴィータ。シャマルも冗談が過ぎただけだ)
「あ、ああ、悪かった」
(さあ、シグナム、早く本題に入ってはどうだ)
「うむ。では本題にはいるが、三人ともいいか?」
「ああ」
「ええ」
「がう」
「だから人間になれよ」
「さて、主はやてのことだが、ナカジマ三佐との関係は皆知っていると思う」
「うん。三佐と会った後のはやて、機嫌いいもんなぁ」
「はやてちゃん、お肌もつやつやしてるしね」
(主はやての衣服にゲンヤ殿の移り香もあるしな)
「そんなもんチェックすんな、つーかわかるのかザフィーラっ!!!!」
(フッ、ベルカの守護獣の嗅覚をなめるな。なんというか、中年を越えた男の加齢臭が……)
「黙れ犬」
 
 
「それでだ、皆の正直なところを聞きたい。三佐と主の関係について、どう思う?」
「それを聞いてどうするつもりなの?」
「はっきり言おう。二人を祝福すべきなのか、それとも反対すべきなのか」
「確かに、三佐は二人の子持ちのうえ、年の差が大きいものね。世間一般的には、お似合いとはとても言い難いわ……」
「でもよぉ、シャマル。結局はやての気持ち次第じゃねえのか?」
「ヴィータ、我らは主の幸せを祈っているのだ。三佐と一緒になることが主の幸せでないと判断すれば、私は反対する」
「でも、二人が好き同士だったらどうすんだよ。まさか力ずくなんて言わないだろ?」
「それはそうよ。スバルとギンガに怒られるわ、ねぇ、シグナム」
「ふっ、戦闘機人二体ごときでわれらヴォルケンリッターを止められると思っているのか」
「そこは威張るところじゃねえだろっ! バトルマニア!」
(だが、あの二人の胃の腑は並ではないぞ)
「大食い勝負かよっ!」
(争いは好まん)
「話し合えばいいだろ、最初から。そもそも、三佐とはやての仲を反対する理由って何だよ」
(ヴィータ、言いたくはないが、主が三佐の妻となった日には、お前との同衾はなくなるのだぞ)
「同衾言うな」
(失言だった、夜伽だったな)
「黙れ犬」
「いや、ヴィータ。ザフィーラのが正解だ」
「そうよ。夜伽って言うのは、主君のそばに寝ずの番で仕えることを言うのよ(本当)。私たち守護騎士にとっては立派な使命なのよ」
「え゛? そうなのか?」
「ああ、そうだぞ。知らなかったのか?」
「……うん。そうか……言葉って色々あるんだな」
「うむ。その通りだ」
「ヴィータちゃんも、もう少しお勉強しないとね」
(一般的には、男性主君がベッドの相手として目下の女を指名するという意味で使われるがな)
「黙れ犬」
 
 
「もし、主が三佐と結婚された場合、三佐は我々にとっては主の配偶者ということになる」
「ある意味、主と同等の存在ね」
「あれ、そうすると、ギンガとスバルははやての義理の娘になるのか?」
「そうなるな」
「そうなると、ギンガとスバルは主の娘。同等とまでは言わなくても私たちの格上の存在になるわ」
「ちょ、ちょっと待て。スバルに仕えることになるのか!?」
「まあ、形としては、ということだが。そういうことだな」
(まあ、あの二人のことだ。我々との関係はこれまで通りで変わるまい。心の中でそう思っていればいいだけの話だ)
「……気になる噂があるのだけれど」
「どうした、シャマル」
「三佐の家で、ナンバーズを引き取るかもしれないって」
「なに?」
「義理の娘として引き取るかもしれないって」
「……えっと……つまり、ギンガやスバルと同等の存在?」
「理屈としては、そうなるわね」
「……ナンバーズの誰かが、あたしたちより格上?」
「そう……なるな」
「なんだか、突然結婚に反対したくなってきた」
「私も」
「私もだ」
(私はかまわん)
「ザフィーラ?」×3
(お前たちが何を思っているのかは私は問わん。しかし、一つだけは言える。たとえナンバーズの誰かがナカジマ家の一員となり、主はやてがナカジマ家の一員となり、我らの主を含む一族が生まれたとしても、私の立ち位置は変わらんということだ……)
「……ザフィーラ……そうか、主の境遇にかかわらず、我らは誇り高きヴォルケンリッターということだな」
「将の言うとおりね。私たち、一番大事なことを忘れていたわ」
「ごめん、ザフィーラ、あたしたちがバカだった」
(美女美少女にモフられる俺、という美味しい立ち位置は断固変わらんっ!)
「黙れ犬」×3
         
 
 
あとがき
 
 
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